ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「お疲れさまでしたー!」
店を出ると、彼が一番奥のバリカーに寄り掛かっているのを見つけて私はそちらに駆け寄った。
「羽倉く……っ!」
言葉の途中で強く抱きしめられてびっくりする。
「りっか、会いたかった」
そのくぐもった声が少し震えていた。
(羽倉くん……?)
ゆっくりと身体が離れて、彼は私に頭を下げた。
「昨日、本当にごめん。電話」
「ううん、それより大丈夫? クマ、いつもより酷くない?」
私はその目元に手を伸ばす。
(もしかして、昨日から全く寝てない……?)
と、羽倉くんは私のその手を優しく握って真剣な表情をした。
「あの報道だけど」
「!」
どきりとして、でもそれを悟られないように私は笑顔を作る。
「あ、あぁ! 学校でもみんな話してたよ。ショック~って」
「あれ、俺じゃないから」
その言葉を聞いて、私は大きく目を見開く。
「今日、事務所にもちゃんと説明してきたんだけど、俺あの人と会ったこともないし」
必死な顔で羽倉くんは続ける。
「向こうの事務所とも話つけて、多分近いうちに向こうから何か発表があると思うんだけど」