ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
と、そのとき昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。
「羽倉くん起きて。昼休み終わりだよ」
言いながら肩を揺すると、羽倉くんはパっと目を開けた。
そのままむくりと起き上がり、ひとつあくびをする。
「眠れた?」
訊くと、彼は寝ぼけ眼でこくりと頷いた。
「明日もよろしく。じゃないと」
「バラす、でしょ。わかってますよ」
「なら、いい」
そして羽倉くんは立ち上がり、そのまま階段を下りていった。
ひとり残った私は、ふぅと溜息をつく。
(やっぱ、夜ちゃんと眠れてないのかな。……電話で子守唄を歌ってあげたりとか……)
そこまで考えて、ハタと我に返り私はブンブンと首を振った。
(いやいや、そこまでする必要ないって。別に彼女でもなんでもないんだし。というか、一応脅されてる立場だし!)
すくと立ち上がり、ぐーっと伸びをする。
「よっし、私も行きますか」
そして私も階段を下り教室へと向かった。