ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「……やっぱり、今日学校休むんじゃなかった」
「え?」
「俺がいない間に、妹尾とりっかが話してるの想像しただけで嫌だ」
「えっ、や、ちょっと話しただけだよ」
「でも、嫌だ」
むーっとした顔の羽倉くんを見上げて、思わず笑ってしまった。
と、そこで自宅アパートが見えてきて、私は足を止める。
「送ってくれて、ありがとう」
「あー……」
「ん?」
「実は、もうひとつりっかに謝らないといけないことがあって」
「え?」
どきりとする。
(なんだろう……)
羽倉くんは言いにくそうに続ける。
「日曜日、どこかに行くって話」
「うん」
「事務所に、念のためしばらくは大人しくしてろって言われて」
「あー、そ、そうだよね」
納得しつつ、ちょっと残念に思った。
(でも、しょうがないよね……)
「だから、俺ん家来ない?」
「え……」
一瞬、その意味がわからなかった。
彼が少し恥ずかしそうにしている、その意味も。
「映画観たり、ゲームも色々あるし、ゆっくり出来ると思うんだけど」
「……っ!」
やっとその意味を理解して、顔が熱くなっていく。
(――そ、それって、おうちデートってやつですか……!?)