ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「……今度、」
「え?」
「今度お邪魔したときは、私がご飯作るから」
「? うん」
そして、私は俯いたまま小声で続ける。
「そのときは、もっと触れて欲しい」
「!」
「――じゃあ、また明日ね!」
奏多くんが隣で驚くのがわかって、私は堪らずアパートへと駆け出した。
「りっか!」
「え?」
足を止め振り返ると、奏多くんが少し赤い顔で言った。
「大好きだ!」
「! 私もー!」
そして、私たちはお互い笑顔で手を振って別れた。
「あっ、りっかねぇ、おかえり~!」
「おかえりなさ~い」
「おかえり。早かったわね。もっと遅くなるのかと思ったわ」
そんな家族の前をバタバタと通り過ぎ、自分の部屋へと直行する。
バタンと自室の扉を閉めて、私はその場に蹲った。
(んも~~何言ってんの私! 恥ずかし過ぎる~~!!)
自分の発言を思い出し、それからしばらくの間私はひとり悶絶していた。