ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい

「で、鈴子は?」

 ドキドキしながら新居さんの方を見ると、彼女も満足そうな顔で頷いてくれた。

「あたしもいいと思う。欲しいね、うちに。その歌声」
「!」

 また顔が熱くなった。

「驚いたよ。小野さん、そんなに歌えたんだ」
「あ、ありがとう。新居さんも、すごくカッコ良かった!」
「そう?」
「うん!」

 私が興奮気味に頷くと彼女は満更でもなさそうに笑ってくれた。

「いや、あたしはまたてっきり妹尾の悪い癖が出たのかと思ったけど、安心したよ」
「悪い癖?」

 見れば植松くんも苦笑していて私は首を傾げる。
 と、妹尾くんが焦るように続けた。

「じゃ、じゃあ、あとはりっかちゃんの気持ち次第ってことで!」
「え?」
「皆、りっかちゃんが練習時間あんま取れないこと知ってるし、それでもうちに来て欲しいってこと!」

 満面の笑みで言われて私は目を見開く。

「うん。待ってるよ、小野さん」
「僕も、良い返事を期待してる」

 ふたりもそう言ってくれて、私は顔だけじゃなく胸まで熱くなるのを感じた。

「……」

 ――そんな私の後ろで、奏多くんが小さく息を吐いたのには気付かなかった。

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