ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「え、えっと、」
でもそんな私を見て彼はふっと苦笑した。
「でもさ、あんな楽しそうに歌うりっか見ちゃったら、もう応援するしかないなって思った」
「奏多くん……ありがとう」
私は心からお礼を言う。
「それに、新居さんだっけ? 彼女もいるし、少し安心した」
「それは私も! 新居さんのドラムカッコ良かった~」
「一年のとき、同じクラスだったんだっけ?」
「うん、あんまり話したことはなかったけど」
「そうなんだ」
「うん……ていうか、私あんまり友達は作らないって決めてて」
苦笑しながら言うと、奏多くんは首を傾げた。
「そういえばりっか、お昼いつも一人だよね……って、いつもぼっちな俺が言うのもなんだけど」
私はあははと笑って続ける。
「ほら、私すぐに帰らなきゃだから放課後は全然遊べないし、友達出来ても向こうに悪いなって思って。だから高校入るときにそう決めたんだ」
「そうだったんだ。……じゃあ、この機会に仲良くなれるといいね、新居さんと」
「!」
奏多くんが優しく目を細めていて。
「うん!」
私は笑顔で頷いた。