ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「――そういうわけで、学祭が終わるまでお迎えが少し遅くなっちゃうんだけど……」
夕方、家族が揃ってから私は皆にその話を切り出した。
嫌だ、ダメだと言われてしまったら諦めようと思った。
――でも。
「いいよ~!」
「うん、おれも。友達と遊んでんし~」
絃葉と弦樹が笑顔でそう言ってくれた。
「私も賛成よ」
お母さんも穏やかな笑顔で頷いてくれた。
「律花にはずっと頑張ってもらっているし、きっとこれまで色々我慢してきたでしょう? だから、少しでも高校生活を楽しんで欲しいわ。学祭でボーカルなんて素敵じゃない!」
それを聞いて思わず涙が出そうになってしまった。
「お母さん……みんな、ありがとう」
泣き顔を隠すように頭を下げてお礼を言う。
すると。
「おれ、りっかねぇが歌ってんの見たいな~」
「わたしもー!」
「そうね、みんなで見に行きましょうか!」
「えっ!? そ、それはちょっと恥ずかしいかも……」
全然考えていなかった展開に、私は慌てることになった。