ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい

「俺、こんな暗い性格で「ハネクラ」なんて名前だから、小学生の頃から「ネクラ」ってあだ名付けられて馬鹿にされて、どんどん自分に自信なくなっていって……でも、だから、そんな俺を見つけてKanataにしてくれたマネージャーとか事務所の皆には本当に感謝してて。大きな仕事が決まれば、それが一番の恩返しになると思うんだ」

 恥ずかしそうにそう話してくれたことが嬉しくて、私は笑顔で頷く。

「そっか……うん。私もそう思う。奏多くんなら絶対大丈夫だし、事務所の人たちもみんな喜んでくれるよ!」
「ありがとう、りっか」

 ――でも。

「……ごめんね。私、奏多くんが頑張ってるのに応援することしか出来なくて」
「そんなことない。俺が頑張れるのはりっかのお蔭」
「え?」

 奏多くんは優しく微笑んでいた。

「りっかの子守唄が俺にとって一番の薬なんだ。だから、これからも歌って欲しい」

 私は目を見開く。

「勿論だよ! 奏多くんがしっかり眠れてお仕事頑張れるように、これからも心を込めて歌うね!」
「ありがとう。俺も、りっかのこと応援してる。……でも、妹尾にだけは気を付けてね」

 思わずきょとんとしてしまう。
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