ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「もう大丈夫だよ。妹尾くん私たちのこと知ってるし、普通にイイ奴だし」
「それが一番心配なんだけどな……」

 脱力するように奏多くんは私の肩に頭を乗せた。
 そんな彼に私はぼそっと呟く。

「……私だって心配だよ?」
「え?」

 顔を上げた奏多くんに、私は小声で言う。

「奏多くんの周りってやっぱり綺麗な人が多いでしょ? 信じてるけど、やっぱりちょっとだけ、心配……」
「! りっか……っ」

 途端、めちゃくちゃ強い力で抱きすくめられてびっくりする。

「ちょ、苦し……っ」
「俺はりっかしか見えてないから。仕事してても、いつもりっかのことばっかり考えてる」
「……ほんと?」
「ほんと」
「嬉しい」

 えへへと彼を見上げて笑うと、頬に手が当てられた。
 彼の瞳に自分が映って、目を瞑ると優しいキスが降ってきた。

「好きだよ、りっか」
「私も、奏多くんが好き」

 そうして、私たちはしばらくの間誰もいない路地で抱きしめ合った。


 ――次の日、奏多くんは早速学校を休んだ。


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