ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい

 私はうっすら笑みを浮かべている新居さんに声を潜め言う。

「ち、違うよ! まさか、そんなわけないじゃん!」
「ふぅ~ん? そう?」
「そうだよ~!」

 あははと誤魔化し笑いをしながら内心バクバクだった。

(び、びっくりしたぁ。新居さん鋭いな。気を付けなきゃ……)

「まぁいいや。それにしても小野さんが来てくれてほんと良かったよ。前のボーカルが急に辞めちゃったから、マジで困ってたんだよね」
「そういえば、前の子はどうして辞めちゃったの?」

 気になって訊いてみる。
 と、新居さんは妹尾くんの背中をなんだか呆れたように見つめながら教えてくれた。

「妹尾の彼女だったんだけどね、別れて、そのまま辞めた感じ? しかもこういうこと一度じゃないからね」
「あー……」

 苦笑してしまう。

「だからあいつに『いい子見つけた!』って言われても、あんま信用できなくてさ。だから小野さんでほんと良かった」

 そして新居さんは綺麗な笑顔を見せてくれた。
 私は少し照れつつ言う。

「でも私も、放課後の練習あんまり参加出来なくて申し訳ないんだけど」
「大丈夫! 改めてよろしくね。あー、そうだ。りっかって呼んでいい? あたしのことも鈴子でいいからさ」

 そう言ってくれたことがすごく嬉しくて、私は笑顔で頷いた。

「うん! こっちこそよろしくね、鈴子ちゃん」

 そして私たちは笑い合った。

(奏多くん、私、鈴子ちゃんと仲良くなれそうだよ……!)

 今すぐに彼に伝えたいと思った。

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