ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「いやいや、それはないからマジで! 推しの彼女とったりなんか俺出来ねーって!」
焦っている様子の妹尾くんに鈴子ちゃんがジト目を送る。
「ふーん、推すのはやめないんだ?」
「うっ……そんな、すぐに推し変とかできねーし……次会えたらこれまでのこと謝らねーと」
「真面目か!?」
そうツッコんで植松くんはまた爆笑しはじめてしまった。
「とりあえず、早くこの騒ぎが収まるといいけどね」
ふぅ、ともう一度溜息をつきながら鈴子ちゃんは窓の向こうを見た。
校門前には未だに記者らしき人たちとギャラリーが集まっている。
「うん……」
(これじゃあ、奏多くん学校来れないよ……)
「で、りっかは大丈夫なの?」
「え?」
皆が心配そうに私を見ていた。
有難くて、嬉しくて、私は精一杯の笑顔で頷く。
「私は大丈夫! 落ち着いたら連絡くれると思うし」
「そう?」
「うん! ありがとう」
お礼を言うと、皆ほっとした顔をした。
「じゃあ、今日の練習はじめよっか」
「うん!」
――大丈夫。
奏多くんのことは心配だし、不安がないわけじゃないけど、気持ちが離れるわけじゃない。
だから、大丈夫。