ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
「ねぇねぇ、小野さんて××高校じゃなかった!?」
「えっ」
バイト先でいつもの先輩に会って早々訊かれギクリとする。
「知ってるでしょ、Kanataがそこの生徒だったって!」
「あー、そ、そうなんです。でも、私全然気付かなくって」
先輩には申し訳ないけれど、私はそう誤魔化し笑いをした。
「そうなの? オーラとか半端なさそうなのに~。それにしても高校生か、まさか年下だったとはなぁ。……彼女とかいるのかな」
急に先輩の声が低くなって更にギクッとする。
「噂とかないの?」
「さ、さぁ?」
首を傾げながら、私はもう一度曖昧な笑みを浮かべたのだった。
「お疲れさまでしたー!」
バイト先を出て溜息を吐く。
(はぁ、結構大事になっちゃってるなぁ)
そうしてスマホを見て、私は着信に気付き足を止めた。
(奏多くん!)
すぐに折り返すと、数コールして彼は出てくれた。
『……りっか?』
「うん! 今バイト終わったとこ」
『お疲れ様』
(奏多くん、やっぱり疲れてる……)
声の調子でそれがわかった。
「大丈夫? 奏多くん」
『りっかこそ、大丈夫? 学校、騒ぎになってるよね? りっかに嫌なこと言ってくる奴とかいない?』
瞬間昼間のことが頭を過ったけれど、心配させたくはなかった。