君のために出来る事-君に伝えたかった言葉と伝えられなかった事-

#14 誰だってブスより美人が良いに決まってる

 保健室のベッドに下ろされた時は、この苦行とも思える行為がやっと終わった事にほっとする。
一人になると、先程の出来事が嫌で
も思い出された。
判ってる…男の子なら誰だって、わたしみたいなブサイクが側にいたら気分悪い事くらい…それでもやっぱり側にいたい…
沈んだ気持ちは中々晴れなかったけど、それでも少し横になっていたら、家に帰る気力が出てきた。

わたしはゆっくりベッドから出たら、カーテンが開いて、立っている瀬戸くんと目が合った。
「悪い、まだ横になってるかと思って…」
声もかけずに開けた事を、気にしているらしい。
「ありがとう。大分落ち着いたから帰るね」
「お…おう…鞄、持ってきてやったぞ」
瀬戸くんは、わたしが鞄代わりにしている、厚手のトートバックを持ってきてくれた。
「えっ?重たかったでしょう?」
「お前が持つには随分重い様だが、何が入ってるんだ?」
彼は眉をひそめて、わたしの鞄を見つめている。
「辞書が入ってるの…今日は漢和と英和の二冊入ってるからちょっと重いかな…」
少し狼狽するわたしを瀬戸くんが呆れ顔で見ていた。
一つの辞書を、家と学校で使っているのが恥ずかしくて、彼から鞄を受けとると、お礼を言ってそそくさと帰った。

「やってしまった…」
朝、自分の顔を鏡で見て唖然とする。
『やだ、思いっきり泣きたくて、泣ける映画五本も観ちゃった…寝不足と泣きすぎで浮腫んで酷い顔…』
気が重い…
案の定、クラスでは嘲笑の的にされる。
部活に行くと、丁度ドアから出てきた先輩に会ってしまう。

「なんだ三ツ木、今日はいつにも増してブサイクな顔だな」
先輩は彼女さんを引き合いに出して、わたしの顔の酷さを指摘する。
先輩の彼女さんは、同性のわたしから見たって、羨ましいくらいの美人でスタイルだってバッチリだ。
わたしはすごすごと、言われた通り掃除をしに準備室へ行った。
『先輩の言う通りだもん、仕方ないよね』

わたしは気持ちを切り替えて、掃除に専念する事にした。
バケツに水を汲もうと、廊下へ出ようとしたら、ドアが開いて瀬戸くんが入ってきた。
「お前さぁ、あんな事まで言われて悔しくないわけ?」
彼が眉間に皺を寄せて訊いてくる。
きっと、先輩とのやり取りを見て、心配してくれているんだ。
「本当の事言われて、悔しがっても仕方ないでしょ?誰だってブスより美人が良いに決まってるもの」
わたしはいつもの様に笑って言う。

心配してくれる瀬戸くんに、自分は大丈夫だと伝えて、わたしはそのまま水を汲みに行った。
『誰だってブスより美人が良いんだよ』

そんなの…判りきってる事じゃない…
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