溺愛幼なじみは甘くて強引
ぬいぐるみには二つのハートのチャームがついていて、それぞれ「A」と「R」の文字が彫られていた。クマを動かすと、それらがぶつかり、カチャカチャ音が鳴る。


「理央。渡英前、あなたに貰ったクマのぬいぐるみ。それはいつだって、私にとってお守りなんだよ。このお守りさえあれば、私はどんな人を前にしても、平気でいられるの。

といっても、理央は忘れてるだろうなぁ。このぬいぐるみのこと」


ハハと、悲しそうに笑うアリスちゃん。その顔に漂うのは哀愁で――長年の間、積もりに積もった、理央への愛そのものだった。


「南月。今日の事、絶対に理央に言わないでね」


――私生まれて初めてナンパされたよ。きっとアリスちゃんが隣にいたからだろうな。可愛すぎて目をひいちゃうんだよ。きっと


その言葉は、見方を変えれば「アリスちゃんと一緒にいたからナンパされた」ともとれる。まさにそう解釈したアリスちゃんは、拳をギュッと握った。
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