溺愛幼なじみは甘くて強引
「!」


居てもたってもいられなくて、私は自販機の陰から飛び出す。そして太陽くんの腕を、勢いよく掴んだ。


「太陽くん、ウチに来て!」

「は?南月ちゃん?どうして……ってか、ずぶ濡れじゃん」

「太陽くんもね!」


二人が歩くと、大量の水を含んだ靴から、キュッキュッと音が鳴る。アスファルトには、二人の足跡がクッキリ残っていた。


「私の家、ここから近いの!早く行こう!」

「え、でも……南月ちゃんの家って事は、理央の家も近いんじゃ……」

「そうだけど、それがどうしたの?」

「どうしたのって……」


言いかけた言葉を飲み込んで、太陽くんは「いや」と頭を振った。

その顔に浮かぶのは、ちょっぴり悪い笑顔――


「このままじゃ風邪引くし、お邪魔しようかな」
< 165 / 252 >

この作品をシェア

pagetop