溺愛幼なじみは甘くて強引
「南月、」

「ん……、んっ!?」


唇を合わせながら、舌を少しだけ、南月の唇にぶつけてみる。まるでドアをノックするように、トントンと。

南月は俺のしたい事を、きっと気づいていると思う。

その証拠に、行動を起こした時に反応があった。目をギュッと閉じるっていう、拒否に近い反応が――


「ごめん、急かしちゃったね」

「う、ううん……、」


唇を離し、南月を抱きしめる。南月は「大丈夫」を繰り返すけど。その顔は、悲しそうだった。

あぁ、やってしまった……。あんなに「キスだけ」と決めていたのに、もう次の段階に進もうとした。また我を忘れていた。

南月を抱きしめていると分かる。強張った体。胸の前で合わせた両手。まるで、凍えている人みたいにガチガチだ。

そうさせたのは、まぎれもない俺なんだけど。
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