溺愛幼なじみは甘くて強引
「南月、先にお風呂入ったら?」

「え、でも……」

「ゆっくりしといでよ。カレーは俺に任せて。ね?」

「あ……う、うん」


俺は風呂のボタンを押して、浴槽が満タンになった時に流れる曲を待つ。

その間、南月は持って来た荷物の中から、必要な物をピックアップしていた。時々、申し訳なさそうに俺の方を見ながら。

すると、しばらくして曲が流れる。俺はカレーの鍋をかき混ぜながら、南月を誘導した。


「何か使い方が分からないものあったら言ってね」

「うん……、ありがとう」


パタンと、浴室のドアが閉まる。その瞬間に、沸き起こる後悔。

俺は、やっぱりダメな男だなって……。こう思うのは、もう何回目だろう。

ぐるぐる、ぐるぐる。鍋の中と、頭の中。どちらも煮え切らない思いが、ひたすら輪をかいて回っている。
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