溺愛幼なじみは甘くて強引
理央の冗談で、肩の力が抜けたのかな。泣いた理由を、冷静に説明出来そうだった。


「理央のことが好きなのに、勇気がでない自分が嫌なの」

「南月……」

「ごめんね、理央っ」


引っ込んだはずの涙が、再びお風呂の水面(みなも)を揺らす。

理央の事を好きな気持ちと、怖い気持ち。それらを足して生まれる「焦る」気持ち。

自分で処理できない感情が、一気に湧き出て……。私の中で、処理が追い付かない。

脳内、パンク状態。

だから「脳と心を整理する時間が必要そうだ」って。そう思っていたのに――


「南月」

「え――」


間近で聞こえた、理央の声。それは確かに、私の耳のすぐ横で聞こえ、浴室に小さく反響する。

振り向かなくても分かる。だって、後ろから理央に抱きしめられているから。私の首に、理央の腕が巻き付いてるから。

でも、ちょっと待って……。

私、裸なんですけど!?
< 61 / 252 >

この作品をシェア

pagetop