溺愛幼なじみは甘くて強引
「り、理央!?」

「そう。俺がずっと洗ってたんだよ。いま気づいたの?」

「な、え……!?」


気づくわけないじゃん!

それに、気づかせないで欲しかったよ!


なんて言えるわけなく……。


「そ、そーなんだぁ」と、消えそうな声で返事をする。

あぁ。まさか振られた相手に、髪を洗ってもらうなんて。おばさん、どこ行っちゃったの……!


「俺はさ」

「え、う、うん?」


急に会話を振られて、ビックリした。

けど、挙動不審な態度も恥ずかしいから、平常心を保って返事をする。


「ショートより、肩くらい髪がある方が好きだな。南月によく似合ってるし」

「っ!?」


んな……っ!?こんな状態で、私のことを気にかけてくれなくても……!


いつもなら嬉しい「理央の世話焼き」が、今はすごく切ない。

目の上にタオルがあって、本当に良かった……。


「あ、ありがとう……」

「うん。じゃあ母さんに代わるね。あと――

カットが終わったら、俺の部屋に来てくれる?話したいことがあるんだ」
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