エリート同期は独占欲を隠さない
そんな未尋の姿を一瞥したあと、桐谷はばつが悪そうな顔で未尋たちの元へやってきた。
目はキョロキョロと泳ぎ、顔はやや引きつっている。人前でこんな熱烈な歓迎をされたのだ。無理もないだろう。
「遅かったね、お疲れ」
「あぁ、悪い」
「来ないかと思ってたよー。良かった、来てくれて。桐谷がいないと寂しいもん」
素直に思ったことを言えば、桐谷はなぜか顔を伏せ、口元を手で覆う。耳が心なしか赤いがそんな桐谷に気づく様子もなく、未尋はテキパキと桐谷の世話を焼く。
「桐谷、コート貸して。ハンガーにかけるから」
「おう、サンキュ」
「何食べる? いつもの軟骨の唐揚げと、ポテサラでいい?」
「じゃあそれで」
桐谷が何が好きで、まず何を飲むのか熟知している。むしろ、これだけ長く一緒にいると知らないことの方がないかもしれない。
注文していたビールが届くと、再び乾杯した。すでにビール4杯目の未尋は顔は真っ赤だが、さっきとは打って変わって笑顔か浮かんでいる。桐谷の登場がよほど嬉しかったらしい。