エリート同期は独占欲を隠さない

「嘘。最近明らかに冷たいじゃん。ちょっと触ったら嫌そうにするし、ぼーっとして話聞いてないこと多いしさ!」

早口でうっ憤をぶつける。だが桐谷はそれ以上言い返そうとせず、難しい顔でふいっと厨房の方へと視線を移した。その態度にますます腹が立った。

言いたいことがあるなら言えばいいのに。男らしくない。

「おいおい、その辺にしとけよ、市ヶ谷。みんな見てるぞ」
「だって……」
「それより明日楽しみだな」

腑に落ちない様子の未尋を宥めるように、明智が明るい口調で話をすり替える。

「市ヶ谷は準備できてるのか? 女子は荷造りが大変だろう」
「別にそうでもないよ。旅館にほぼそろってるし、洋服詰めたら終わり」

ぶすっとしながら、ビールを煽る。そんな未尋を気遣うように「それもそうだな」と明智が軽快な調子で相槌を打った。

未尋たちの会社は、年に一度、社員旅行がある。去年は熱海で、今年は箱根のちょっとリッチな温泉の予定。

去年も大いに盛り上がって楽しかった。桐谷ともバカなことばっかりいい合って、大笑いしていた。

< 12 / 74 >

この作品をシェア

pagetop