エリート同期は独占欲を隠さない


キレのいい突っ込みを入れると、明智は愉快そうに笑っていた。

(――ったく、おもしろがりやがって)

未尋を女として意識し始めたのは一か月前。未尋が元彼に迫られ、困っていたのを助けたのがきっかけだった。

◇◇◇

その日は残業で遅くなり、社内にはすでに人気がなかった。腹も減ったし、何か食って帰ろう、なんて呑気なことを考えながらエントランスに降りると、入り口付近に一組の男女が話をしているのが目に入った。

きっとどこかのカップルが今からどこに行く?なんて打ち合わせしているのだろうと勝手に想像していた。

こんなところでいちゃつくなと、心の中で悪態をつきながら通り過ぎようとしたとき、

「だから謝ってるだろ」

男の罵声が聞こえた。

ドキッと弾かれるようにそちらを見れば、顔をこわばらせ萎縮する未尋が目に入った。男が怒鳴っている相手は未尋だったのだ。

「もうやめてって言ってるの」
「なんでだよ……話せばわかるって」

これはただごとじゃない? 間に入るべきか。いや、カップルの喧嘩に他人が首を突っ込んでいいものか。

「きゃっ……」
「市ヶ谷!!」

だがうだうだした思考も、彼女の悲鳴とともに吹き飛び、気づけば体が勝手に動いていた。

強引に男の手を未尋から引きはがし、未尋を自分の腕の中に閉じ込めた。

「え……? 桐谷?」
「未尋、お待たせ」


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