エリート同期は独占欲を隠さない




そうこうしていると、バスが到着した。未尋が、はしゃぎながら乗り込んでいるのが見えた。その後に続くように、桐谷と明智も足を進める。

「あ~、桐谷だ」

乗り込んだ瞬間、通路側に座っていた近藤が、桐谷を見て声を上げた。近藤は未尋と仲が良く、部署は違うが同じく同期。アンニュイな雰囲気をまとい、いつも眠そうな目をしている。

結婚して早く楽がしたいと宣言しているらしく、覇気がないというか、やる気がないというか、常にマイペース。その気怠い雰囲気が色っぽいという男もいるが、桐谷はどちらかというと苦手だった。

「桐谷、市ヶ谷の隣に座る?」

気を遣った近藤が、のんびりと立ち上がろうとする。するとそれを隣に座っていた未尋が止めた。

「近藤、いいから。桐谷は私の隣、嫌なんだって」
「いや、だからそれは……っ」

どうやら昨日のことを根に持っているらしく、慌てて否定しようとしたが、ぷいっと窓の外に視線を向けられてしまった。

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