エリート同期は独占欲を隠さない

機嫌は直ったと思っていたが、やはりまだ怒っているらしい。

「なに、あんたら喧嘩でもしたの」
「別に」

頬杖をつき、窓の外を眺めながら素っ気なく言う。そんな未尋を目の当たりにして、桐谷の胸に不安な影がさした。

これは本当にまずいのでは。このままこじれて口もきいてもらえなくなってしまうかもしれない。

明智の言う通り、ちゃんと今の自分の気持ちを言葉にしないと、取り返しがつかないことになってしまう。

(――だけどどうやって?)

結局、その繰り返しである。

バスに揺られること二時間。あっという間に旅館に着いた。今から夜の宴会まで、自由時間となっている。

各々振り分けられた部屋に向かうと、同室の明智がさっそく風呂に行く準備をしていた。そして「お先」と告げると、すぐさま視界から消えた。どうやら明智も温泉を楽しみにしているらしい。

きっと未尋も今ごろ部屋で興奮しているんだろう。そんな想像をしていると、明智が朝言っていた言葉が頭を過った。

『この旅行で一気に仕掛けるのもあり』

でも、未尋はあの軟弱そうな男と別れたばかり。


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