エリート同期は独占欲を隠さない

「市ヶ谷ってさ、小柄だけど胸はでかそうだよな」
「はぁ!? やめろ! 消せ消せ! お前の脳内から市ヶ谷を消せ!!」
「ムキになっちゃって。よっ! このむっつり!」

誰がむっつりだ!と、突っ込んでいると「桐谷?」と呼ぶ未尋の声が届いた。
その瞬間、心臓がドキリと浮く。

「いるんでしょー? 露天風呂最高だね!」

隣から嬉々した未尋の声が風に乗って流れてくる。その声を聞いていると、嫌でも想像してしまう。未尋の裸を……。

明智が言うように、未尋はどちらかといえば小柄な方だ。身長も一五五センチと平均より低い。

でも桐谷はこの前の一件で知ってしまったことがある。小柄な割に、案外胸がありそうだということだ。それに色が白くて、手首なんてびっくりするほど細い。あのときの感触が、今も残って離れなかった。

「あれ、あんたたち、喧嘩してるんじゃなかったの?」
「あ、やばっ! つい」
「バカねー」

近藤に突っ込まれ、未尋はそれ以上声をかけてこなかった。きっと今頃、慌てふためいているのだろう。

「どうしよう、どうしようと」と、近藤にすがりついているかもしれない。
単純な未尋が容易に想像できて、桐谷は思わずぷっと噴き出してしまった。

(――あぁ、やっぱ俺、あいつが好きだわ)

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