エリート同期は独占欲を隠さない

「また言ってる。そう簡単にあるわけないじゃん」
「旅行といえば出会いでしょ」
「でた。近藤のお決まりのセリフ」

『〇〇といえば出会い』は、もはや近藤の口癖。とにかく年中、出会いを探している。でもなかなかいい人と巡り合えないらしい。常に女として気を張っている近藤が眩しいし、ある意味尊敬する。

その足で宴会会場に着くと、すでに数名の社員が集まっていた。

今から宴が始まる予定だ。旅行のときは無礼講で、みんな好き勝手飲んで食べて騒ぐ。もちろん未尋も。

「ビール、ビール」とはしゃぎながら席に着くと、すぐに所長の挨拶が始まり、その後みんなで乾杯した。

「ぷはぁ~、お風呂あがりのビール最高!」
「あんた、年々おっさん化してるよね」
「うるさいなー、いいの別に」
「モテないよ」
「そんなの、どうだっていいもん」

ケラケラと上機嫌で笑いながら、ビールを煽る。そんな未尋に、近藤が呆れたような視線を送っていた。

「ん! このお刺身も美味しい! 近藤も食べてみてよ。めちゃくちゃ美味しいから」
「私、魚苦手なんだよね。あげるよ」
「いいの? やったー」

近藤のテーブルに手を伸ばし、ひょいと口に放り込む。そして満足げな笑みを浮かべた。

コースになった懐石料理は、旬の魚のお造りに、上品な味わいのお吸い物、天婦羅など、どれも舌をうならせた。中でも、特選和牛を使った牛鍋は絶品だった。 

「はぁ~、幸せ」

とろけるようなうまみが口の中に広がり、未尋はしみじみと噛みしめる。お酒に、美味しいご飯、そして温泉。まさに至福の時。未尋は嫌なことも忘れ、お酒と食事を大いに楽しんだ。

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