エリート同期は独占欲を隠さない
始まって三十分が過ぎた頃。他の社員たちもほどよく酔い始め、場のボルテージが上がっているように思えた。
普段、気遣を必要とする仕事のせいか、飲み会になると、羽目を外しすぎる社員が多い気がする。ステージ側では中堅社員が真っ赤な顔で高笑い、上座では重鎮たちが機嫌よく飲んでいる。
そんな中、こちらを一点に見つめる目があった。桐谷だ。少し離れた場所から未尋を見ていて、目が合っているにもかかわらず逸らそうとしない。何か言いたげな様子で、じっと未尋を見ているのだ。
あんなに拒絶していたくせに、いったいどういうつもりなんだと、未尋はムッと眉をひそめた。
少し前ならこっちに来て飲もうよと言っていただろうが、冷たくされるのは傷つく。あんな気持ちになるくらいなら、最初から期待しないほうがいいと悟り、未尋はさっと目をそらすと、手酌でビールを注いだ。
けれど、桐谷は何を考えているのか、逸らそうとしない。ビシビシと痛いほど視線を感じる。
「ねぇ、市ヶ谷。あれどうかしてよ。さっきからすごい視線感じて居心地悪いんだけど」
桐谷の視線に気づいた近藤が、未尋を小突く。