エリート同期は独占欲を隠さない
「いいよ、放っておこう」
「あんたと一緒に飲みたいんじゃないの」
「まさか」
ないないと、手を横に振っていると「あ、ほらやっぱり」という近藤の声がした。
顔を上げれば、浴衣姿の桐谷がグラス片手にこっちに向かってきていた。
(――え、なんで)
「市ヶ谷、隣いい?」
「は? どうして?」
「言い訳しにきた。悪い近藤、ちょっと避けてもらっていい」
ぐいぐいくる桐谷に唖然としている間にも、強引に割って入られた。近藤は「どうぞごゆっくり~」と言ってどこかへいってしまうし、必然と二人きり。
(避けてたと思ったら、次は強引に隣に来るって、なに!? しかも言い訳って!?)
わけがわからないと、心の中で悪態をつく。だが桐谷は、何食わぬ顔で話しかけてくる。
「風呂。気持ちよかったな」
「えぇ、まぁ」
つっけんどんに返答するが動じていないのか、桐谷はあぐらをかき、平然とビールを注いでいる。どうやらここに居座る気らしい。
(――今年はこんなふうに並べないと思っていたのに……なんなの本当。調子狂う)