エリート同期は独占欲を隠さない
「なんで来たのよ」
「いいだろ別に。ほら、飲めよ」
グラスにビールを注がれ慌てて口を付ける。同時に、ちらっと桐谷を見た。
髪がわずかに湿っているせいか、すごく色っぽく感じる。それに肩幅が広いため、浴衣が良く似合っている。雑誌の表紙も飾れそう。
現に、前に座る女子社員が頬を染め、ひそひそと桐谷の話をしている声が聞こえる。
「桐谷さんの浴衣姿、やばい」
「これはまさに眼福」
その声は桐谷にも聞こえているはずなのに、まったくといって無関心。きっと言われ慣れているのだろう。イケメンの耐性とは恐ろしい。
けれどそういう未尋も、彼女たちと同様、内心そわそわしていた。桐谷の浴衣姿を見るのは初めてじゃないし、桐谷が隣にいるのは慣れているはずなのに。どうしてだろう。去年はこんなことなかった。
「どうした?」
「ううん。なんでもない」
桐谷が来てから胸がドキドキしておさまらないなんて、言えるはずない。これはきっと、お酒のせいだ。じゃなきゃ、まるで桐谷が好きみたいじゃないか。
「あの、私たちも一緒にいいですか?」