エリート同期は独占欲を隠さない
緊張をほぐすようにビールを一気に流しこんだ直後、ひそひそと話していた女子社員が、遠慮がちにやってきた。手にはそれぞれ瓶ビールが握られている。しかも湯上りなのにきちんとメイクをしていて、女子力の高さを思い知る。
(――私、ガチのすっぴんじゃん)
途端に恥ずかしくなった未尋は、体を縮こませ下を向いた。身だしなみとか、マナーとか、完全に欠落していたことを悔いた。
「私たちも桐谷さんとゆっくりお話したくて」
彼女たちは未尋より 二つ下の後輩で、前々から桐谷のことを狙っていたのは知っている。今日は桐谷と近づける絶好のチャンスだと思っているのだろう。
「いいですよね? せっかくの旅行ですし。お酌しますよ」
照れたように桐谷にお伺いを立てると、強引に桐谷と未尋の間に割って入ろうとした。だがその瞬間、桐谷が「ごめん」と決然とした口調で言った。
「市ヶ谷と話したいことがあるんだ。悪いけど」
桐谷が申し訳なさそうに謝ると、二人は目を見合わせていた 。
「……そうなんですね。わかりました」
「ごめんね」
肩を落としながら、元の席へと戻って行く。