エリート同期は独占欲を隠さない

その背中を見ながら、未尋は桐谷に抗議した。

「ちょっと、可愛そうじゃない。せっかく来てくれたのに」
「変に優しくして、勘違いさせるよりはいいだろ」

きっぱりと言い切られ、押し黙る。　やはりイケメンとは恐ろしい。普通の男なら喜んでお酌してもらうだろうに。

「それに、もう好きな子にしか優しくしたくない」
「ふーん」

好きな子ね。いつの間にできたんだろう。そういえば桐谷の浮いた話はあまり聞いたことがない。

去年の今ごろは彼女がいたような気がするが、三カ月くらいですぐに別れたと聞いている。しかもそれっきり新しい彼女ができた気配はない。

好きな子って誰だろう？　会社の子だろうか？

「あれからあの男は来てないか？」
「あぁ、うん。おかげさまで」
「そっか。よかった」

あの男とは、元カレのことだ。彼とは半年ほど付き合っていたが、浮気され別れた。アポなしで遊びにいったところ、浮気相手に鉢合わせたのだ。

いやもしかすると、未尋が浮気相手だったのかもしれない。今となってはわからないが。

その場で別れを告げたのだが、そのあともしつこく電話してきたり、家に押しかけてきたりと迷惑していた。