エリート同期は独占欲を隠さない
未尋がまともに取り合わなかったこともあり、会社にまで乗り込んできてあの騒ぎというわけだ。桐谷が援護してくれたときは心からホッとして、崩れ落ちそうになった。しかも桐谷はそれだけでなく
『俺の彼女に近づかないでもらえる』と、一喝してくれたのだ。
それがなかなかの迫力で、元カレはすごむ桐谷に怯え、一目散に逃げて行った。お陰であれから待ち伏せされることも、電話がかかってくることもなくなった。
(――あれ、思い出したら、また胸の奥がくすぐったいような……)
どうしてだろう。意外な一面を見たからだろうか。男らしく守ってくれたから?
あのとき知ったことだが、桐谷は普段のスーツ姿からは想像できないほど逞しくて、胸板も厚く筋肉質だった。手も大きくて力も強かった。
今まで当たり前のように傍にいて、友達だと思っていた桐谷が突然ただの男に見えて、狼狽えてしまったのは否めない。
あの一件で、様子がおかしくなったのは桐谷だけでなく、未尋もまた同じといえる。当時の光景を思い浮かべる度、胸がざわつくのだ。