エリート同期は独占欲を隠さない
「はーい、みなさん、ステージに注目~! 今から所長が歌いますよ。手拍子の用意をお願いします」
副所長がテンション高々に声を張り上げるのを聞いて、二人でハッとしながら顔を上げる。
見れば所長が「日本一の上司」と書かれた襷をかけ、マイクを握っていた。
「よっ! 所長! かっこいい」
太鼓持ちの副所長がはやし立て、それに調子づいた所長が上機嫌でスタンバイしている。所長のカラオケ大会が始まると、なかなか終わらない。エンドレス&問答無用で、サザンを聞かされるのだ。はっきり言って迷惑な行事だ。
「また今年も始まっちゃったね」
「……あぁ」
桐谷は落胆したように未尋から手を離した。
結局、何がいいたかったのか聞きそびれてしまった。
しかも桐谷は所長に背を向け、反抗期の子どものような態度で日本酒をお猪口に注いでいる。
(――変な桐谷。あの日からお前が、の続きはなんだったのだろう?)