エリート同期は独占欲を隠さない
「でも、同級生だよ?」
「でもじゃねーよ。男の部屋にのこのこ行くなって言ってんの」
珍しく声を荒らげ怒っている。未尋はしょんぼりと肩を落とした。
「そんなに怒らなくてもいいじゃん」
「無防備すぎるんだよ。さっきしゃがんだとき、ここ、見られてるの気づかなかったか?」
「え?」
自分の胸元をトントンと指差す桐谷にハッとし、自分の襟元に視線を落とすと、大きく開いた襟元から、ちらっと下着が見えていて、ぶわっと顔が熱くなった。
――嘘、全然気づかなかった!
「男っていうのはそういうの見てんだよ。警戒心なさすぎ」
仏頂面で叱られ、さらに気持ちが沈んだ。
だからさっき、この羽織を着ろって……。鈍感すぎる自分が、情けない。
「まぁまぁ、せっかくの旅行なんだから、説教はそのくらいにしておけよ」
そこに、苦笑いを浮かべた明智がやって来た。両手には売店で買ったと思われるお酒やおつまみが握られている。
「な? 市ヶ谷」
明智に優しく微笑まれ、ホッと安堵する。桐谷と明智は、まさに塩と砂糖といった組み合わせだ。
「そんなに飲み直したいなら、俺らの部屋来いよ」