エリート同期は独占欲を隠さない



「でも、同級生だよ?」
「でもじゃねーよ。男の部屋にのこのこ行くなって言ってんの」

珍しく声を荒らげ怒っている。未尋はしょんぼりと肩を落とした。

「そんなに怒らなくてもいいじゃん」
「無防備すぎるんだよ。さっきしゃがんだとき、ここ、見られてるの気づかなかったか?」
「え?」

自分の胸元をトントンと指差す桐谷にハッとし、自分の襟元に視線を落とすと、大きく開いた襟元から、ちらっと下着が見えていて、ぶわっと顔が熱くなった。

――嘘、全然気づかなかった!

「男っていうのはそういうの見てんだよ。警戒心なさすぎ」

仏頂面で叱られ、さらに気持ちが沈んだ。

だからさっき、この羽織を着ろって……。鈍感すぎる自分が、情けない。

「まぁまぁ、せっかくの旅行なんだから、説教はそのくらいにしておけよ」

そこに、苦笑いを浮かべた明智がやって来た。両手には売店で買ったと思われるお酒やおつまみが握られている。

「な? 市ヶ谷」

明智に優しく微笑まれ、ホッと安堵する。桐谷と明智は、まさに塩と砂糖といった組み合わせだ。

「そんなに飲み直したいなら、俺らの部屋来いよ」

< 38 / 74 >

この作品をシェア

pagetop