エリート同期は独占欲を隠さない



容姿はいたって平凡だが、くりっとした大きな目は愛らしいと褒められるし、笑うと大きく横に広がる口は、親しみやすそうだと言われる。

肩まである黒髪は一つにまとめていることが多く、お洒落に気を遣うタイプではないが、いつも明るく元気なのが取り柄。馬鹿正直なため、お世辞が言えないのが玉に瑕だが、それもまた未尋の長所だといえる。

「桐谷、おめでと。でも次は負けないからね」
「精々頑張れよ、市ヶ谷」

うすら笑いされ、ムッと眉根を寄せる。お前には無理だと言いたいのだろう。
たしかに未尋が勝つことの方が少ない。

勝ったとしても、その月は桐谷がインフルエンザで寝込んでいたとか、皮肉な理由が必ずといって伴う。

どうやったらあの桐谷をあっと言わせられるのか。負けず嫌いの未尋は毎日考えている。

「あ、そうだ、桐谷。今日行くでしょ? 飲み」

そして恒例行事がもう一つ。営業成績発表後は必ず飲みに行くのだ。それは二人だったり、もう一人の同期、明智を交え三人だったり、その時によって変わる。
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