エリート同期は独占欲を隠さない
四章
下心丸出しの男たちに腹が立って仕方なかったが、未尋が部屋に来てくれたことで、その気持ちもいつの間にか静まっていた。
売店で買い物中、二人が男に声をかけられているのをちょうど見かけ、まずいと思った桐谷は、慌ててその場を駆けだした。
あと少し遅かったら、連れて行かれていたかもしれない。あの男たちにいいようにされたかと思うと、腸が煮えくりかえりそうだった。
「私たちの部屋と間取りがちょっと違うね」
部屋に入るやいなや、未尋がキョロキョロと中を見渡している。ほんのり頬が蒸気していて、浴衣姿がなんとも色っぽい。去年はこんなこと思わなかったのに……。
「部屋に露天風呂ついてたらよかったのにな」
明智が、袋から酒やつまみを取り出しながら言う。選んでいる最中で売店を飛び出したため、結局明智に丸投げするかたちになってしまった。
慌てて未尋の元へ駆けて行った桐谷の姿を見て、クスクス笑っていたのは知っている。
あんなふうに焦る桐谷を、いまだかつて誰も見たことないかもしれない。客にどんな理不尽なことで怒鳴られようが、クレームを入れられようが、桐谷は動じないし、どんな案件も涼しい顔で対応する。それが未尋のこととなればこれだ。
だが当の本人は知る由もなく「部屋風呂って憧れる」なんて言いながら、のほほんとしている。
――まぁ、何はともあれ、阻止できてよかった。