エリート同期は独占欲を隠さない

「じゃあ、みんな座って座って」

明智の声に、未尋と近藤がテーブルにつく。桐谷もそれに続くように、未尋の前に腰を下ろした。 

「じゃあ、改めて乾杯」
「かんぱーい」

元気いっぱいの未尋を目の端でとらえながら、缶ビールに口を付けた。

自分の気持ちを自覚してから未尋のことを、誰にも触れられたくない、奪われたくないという気持ちが、桐谷の中で加速していた。

未尋は昔から何も変わらないのに、自分の気持ち一つでこうもかわるものか。
昔から元気で、裏表がなく明るい女だった。

かれこれ五年の付き合いになるが、これまでなんでも包み隠さず話してきたし、醜態もみせてきた。それなのにいまさら恋心に変わるなんて、誰が想像したか。

いや、随分前から桐谷にとって未尋は特別な存在だったのかもしれない。桐谷に恋人がいる期間でも構わず飲みに行ったし、そのことで彼女に怒られたこともあった。それでも未尋との縁は切ることができなかった。

未尋には言えないが、未尋が原因で別れたこともある。

『彼女と私、どっちが好きなの!?』とキレられ、迷わず未尋と答えたのがまずかった。いや、そんなの、恋人からしたら絶対に嫌だ。むしろ別れて正解だ。

(――そういえば、誰かを本気で好きになったことはあっただろうか)
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