エリート同期は独占欲を隠さない

つい仕事と友達を優先にしがちで、溺れるような恋というものを、いまだかつてしたことがないことに気がつく。

(――俺って、最低じゃん)

今になって、これまで泣かせてきた女性に対して申し訳ない気持ちになった。

「あ~あ、桐谷のせいで出会い(獲物)逃がしちゃった」

自棄になったようにビールを煽る近藤に抗議され「悪い」と謝る。だが近藤は不服そうにしている。

未尋から聞いていた通り、近藤はかなり恋愛に積極的のようだ。肉食系の近藤と一緒にいると、未尋まで巻き込まれかねない。今回でそれがよくわかった。

あのムカつく元カレとの出会いもまた、近藤がセッティングした合コンだと言っていたし。

「近藤、俺が誰か紹介してやるよ」
「えー? 本当?」
「あぁ。だからあんまり手あたり次第漁るな」
「やった。ラッキー」

未尋のために近藤まで囲いこむなんて、姑息だとは思ったがこれもいたしかたない。大学時代の知人でも紹介して、これ以上未尋を巻き込むのはやめてもらおう。
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