エリート同期は独占欲を隠さない


「あいつらに声をかけられるのを見て、嫉妬で狂いそうになった。お前が好きだ」
「え?」
「市ヶ谷、好きだ」

静かな空気を低い声が割く。強い意志を孕んだ瞳に射抜かれた未尋は、凍りついたように固まってしまった。

だが瞳だけは、標的を失ったように、キョロキョロとしている。そんな動揺する未尋に、桐谷は続けた。

「男に懲りてるっていうのもわかってる。だから待ってる。お前が俺のことを見てくれるまで」
「ご、ごめん、混乱してる」

酔いもすっかり冷めてしまい、いつもの未尋に戻っていた。頬が熱いのか、パタパタと仰いでいる。

「悪い、困らせるつもりじゃなかったんだ。ただ知っててほしかっただけだから。だからこれまで通り……」
「待ってよ、私だって……ずっと考えてたよ。あの時、桐谷が男らしく守ってくれたのがすごく嬉しかった。でもそのあとギクシャクしちゃって、もう桐谷と普通にできないのかなって、思ったら怖くて苦しかった。これが好きなのかどうかはよくわかんないけど、私の中で、桐谷は特別だと思う」

顔を真っ赤にしてたどたどしく言葉を紡ぐ姿は、桐谷の目にたまらなく可愛く映った。

(――これがあの市ヶ谷? 俺に対して照れて困ってる。めちゃくちゃ可愛い)
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