エリート同期は独占欲を隠さない


営業成績を抜かれたからといって、いがみ合うことも、罵り合うこともなく、未尋と桐谷は常にフェアで、良き仲間といえる。

見目麗しく、仕事もできる桐谷は必然とモテるため、女子社員たちから恨みを買うこともしばしばあるが、未尋はまったく気にしていない。

そもそも、桐谷とどうこうなるなんてありえないと思っているし、気を遣わなくていい関係を、そんなことで手放すのが惜しかったのだ。

けれどその関係性が最近、崩れ始めているような気がしてならなかった。

「あー……どうするかな」
「何よ、その曖昧な返事は。いつもなら、すぐ行くって言うくせに」
「だいたい、明日から社員旅行なのに飲んでていいのかよ」
「別に関係ないでしょ。桐谷だってそんなこと気にするタイプじゃないじゃん」

翌日が休みだとか仕事だとか、そんなこと気にしている様子はこれまでなかった。むしろ、帰るという未尋を「もう一軒いこうぜ」と、引っ張りまわしていたのは桐谷のほうだ。


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