エリート同期は独占欲を隠さない
五章


心臓がまるで競り合うように、早鐘を打っている。桐谷の腕の中はやはり広くて、どこか落ち着く。

けれど、今日はこの前とは違う。好きだと言われ、泣きそうなほど嬉しくて、同時に自分も同じ気持ちだということに気がついた。

桐谷だったから、素っ気なくされて寂しかった。悲しかった。未尋にとって、桐谷は随分前から特別だったのだ。

「市ヶ谷」

さっきの続きと言わんばかりに、キスが降ってくる。

(――私、桐谷とキスしてる)

気持ちふわふわと浮ついていて、まだどこか現実味がない。しばらく誰とも恋愛はしないだろうと思っていたのに。まさか桐谷とこんなことになるとは想像もしなかった。

「市ヶ谷、可愛い」
「んっ、はぁ……」

口内を舌で探られ、くすぐったいけど気持ちがいい。
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