エリート同期は独占欲を隠さない
歯裂をなぞられ、上あごを擦られると、脳内が痺れる感覚になる。滑らかな舌の動きはいやらしいけど、気持ちがいい。
――桐谷って、こんなふうにキスをする男だったんだ。
気がつくと、自らも積極的に絡めていた。くちゅくちゅと唾液が混じり合う音が部屋に響いて、羞恥に頭を抱えたくなるのに、求め合う舌が止まらない。
「やばい。止まらなくなりそう」
苦しそうに言いながら、ぎゅうっと大事そうに抱きしめる。どちらとも薄い浴衣一枚。互い体が火照り、昂っているのがわかる。
このまま押し倒してしまいたいという桐谷の葛藤も、手に取るようにわかったが、互いに「理性」の言葉が頭にちらついている。なにせ社員旅行の場だ。未尋は、ありったけの理性を動員させ、桐谷の胸をそっと押した。
「これ以上はもう……」
「わかってる。もう少しだけ。頼む」
だが桐谷から出た言葉は、そんな切羽詰まったものだった。しかもねだるような言い方に未尋はついキュンと胸をくすぐられ、許してしまった。
普段クールで、歩いてるだけで、女性を虜にしてしまうような男が、未尋が欲しくて苦しそうにしている。