エリート同期は独占欲を隠さない

歯裂をなぞられ、上あごを擦られると、脳内が痺れる感覚になる。滑らかな舌の動きはいやらしいけど、気持ちがいい。

――桐谷って、こんなふうにキスをする男だったんだ。

気がつくと、自らも積極的に絡めていた。くちゅくちゅと唾液が混じり合う音が部屋に響いて、羞恥に頭を抱えたくなるのに、求め合う舌が止まらない。

「やばい。止まらなくなりそう」

苦しそうに言いながら、ぎゅうっと大事そうに抱きしめる。どちらとも薄い浴衣一枚。互い体が火照り、昂っているのがわかる。

このまま押し倒してしまいたいという桐谷の葛藤も、手に取るようにわかったが、互いに「理性」の言葉が頭にちらついている。なにせ社員旅行の場だ。未尋は、ありったけの理性を動員させ、桐谷の胸をそっと押した。

「これ以上はもう……」
「わかってる。もう少しだけ。頼む」

だが桐谷から出た言葉は、そんな切羽詰まったものだった。しかもねだるような言い方に未尋はついキュンと胸をくすぐられ、許してしまった。

普段クールで、歩いてるだけで、女性を虜にしてしまうような男が、未尋が欲しくて苦しそうにしている。
< 53 / 74 >

この作品をシェア

pagetop