エリート同期は独占欲を隠さない
「嘘だよ。冗談。相変わらずおもしろいなー、市ヶ谷は」
「もう! 変な冗談やめてよね。私は真剣に悩んでるのに」
明智はこういうイタズラ好きな面がある。未尋をからかっては、酒のつまみにするのだ。
未尋も単純で人を疑うことを知らないから、明智がこういう男だとわかっているにもかかわらず 、必ずひっかかる。
けれどこの関係が心地よく、これまで仕事を頑張ってこられたのは二人がいたから。
クールで成績優秀な桐谷に、お兄ちゃん的存在の明智、そして未尋と三人は入社当時から友好的な関係だった。それなのに、桐谷が急に態度を変えるから、調子が狂って仕方ない。
「明智から桐谷に聞いてみてよ。もし私に悪いところがあるんだったら直すからさ」
「んー、まぁいいけど」
「ほんと? よかったー」
ホッとしながら、ビールを喉に流し込む。そんな未尋を、明智が不敵な笑みを浮かべ見ていた。
「ん? 何?」
「いや、彼氏と別れたって聞いたから、今日はそのことを愚痴るのかと思ってた。全然違うことで悩んでるから、ちょっとおかしくてさ」
「あぁ……そうだった」