エリート同期は独占欲を隠さない
言われて思い出すとは……。つまり、そういうことだろう。
一か月ほど前まで、未尋は付き合っていた彼氏がいたが、相手の浮気が原因で別れた。
そのあともしつこく復縁を迫られ、困っていたところを桐谷が助けてくれたというエピソードがある。よくよく考えたらあのあたりからだ。桐谷がよそよそしくなったのは。
「いろいろ大変だったんだろ?」
「まぁ、ちょっと」
「次は変な男に捕まらないようにな」
茶目っ気を含んだ言い方で釘をさすと、おつまみきゅうりをポリっと噛む。そんな明智に「わかってる」と曖昧に返事をすると、ちらりと時計を確認した。
時刻は二十一時を回ろうとしているが、桐谷はまだこない。
スマホを見るが連絡も入っていない。本当にこないつもりなのだろうか。明智は来たり来なかったりだが、桐谷が来なかったことは一度もない。
やっぱり自分が何か地雷を踏んでしまったのだろう……。
そう思っていると、入り口のドアが開いた。見れば桐谷が入ってくるところだった。
「桐谷! こっちこっち!」
つい嬉しくなって、大袈裟に手を振る。