憧れのCEOは一途女子を愛でる
「朝陽があのキャンピングカーでデートするとはな。初めてじゃないか?」

「ああ」

「いやぁ、朝陽にもそういう男らしい部分というか恋愛感情がちゃんとあって、俺ちょっと安心したわ」

 当然俺だって人並みに恋愛感情くらい持っている。
 冗談めかして嫌味を言う朔也に、俺たちは親友じゃないのかと抗議の意味を込めて冷たい視線を送った。

「茶化すなよ」

「悪い。俺はお前が遊びで女と付き合わないのは知ってる。イケメンだからめちゃくちゃモテるくせに。でも顔が好みなだけで近寄ってこられても、神谷朝陽という人間を本気で好きになってくれなきゃ嫌なんだろ?」

「そうだ。遊びで付き合ってなにが楽しい? 俺はなにも満たされない」

 眉をひそめて持論を展開する俺の意見を聞き、同感だとばかりに朔也がニヤニヤしたままうなずいた。
 もっと言えば、俺も相手に対して本気になれなければ付き合う意味はない。

「香椎さんも朝陽のことはイケメンだと思ってるだろう。けど、お前を心から尊敬してるらしいからな。伊地知さんがそう言ってた」

 尊敬してくれるのはうれしいが、彼女に限ってはそれだけで終わってほしくない。
 俺は互いに心から愛し合う仲になりたい。そう思える相手はあとにも先にも……香椎冴実、ただひとりだと思う。

「お前はさ、最初からビビッと来てたんだよ」

「……え?」

「最終面接で香椎さんだけ即採用を決めただろ? 無自覚だったかもだけど、朝陽はあのとき香椎さんに惹かれたんだよ」


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