憧れのCEOは一途女子を愛でる
§7.君の想像をはるかに超えて
***

 一週間の始まりである月曜日、会社で何度も集中力を欠きながらも、なんとか一日の業務を終えた。
 私がぼんやりとしている理由は土曜日のあのことに起因している。
 キャンピングカーに乗せてもらい、社長と綺麗な川のほとりで過ごして……そのあとキスをされたから。

 なにが起こったのか、二日経った今でも私はよくわかっていない。
 考えても答えは出ないのに、あの出来事が頭から離れなくて、今日はずっとぼうっとしがちだった。
 集中できないなら早めに仕事を切り上げるほうがいい。そう判断して急ぎではない仕事は明日に回した。

 こんなにも仕事が手に付かないのは初めてだ。気を抜くとすぐに眉目秀麗な社長の顔が頭に浮かんでくる。
 特にあのときの社長は全身から色気があふれ出ていて、私はすっかり骨抜きにされてしまった。
 今思い出してもドキドキと鼓動が早まる。一階に向かうエレベーターの機内で自分の唇にそっと触れ、誰もいないのをいいことに悶えそうになった。

 もしかしたら都合のいい夢でも見たのだろうか。
 たとえそうなのだとしても、胸がキュンとして最高に幸せだったのだからそれでもいいとすら思えてくる。

「香椎!」

 会社の外に出ようとしたらロビーで後ろから名前を呼ばれ、振り返ると氷室くんが走り寄ってくるのが見えた。

「お疲れ様。氷室くんももう帰るの?」

「ああ。香椎こそ今日は上がるのが早いな。というか顔が赤いけどどうした? 体調悪い?」

 指摘を受けた私は即座に自分の両頬に手をやり、「大丈夫」と言いつつふるふると首を横に振った。
 顔が赤い原因はおとといのキスシーンを回想していたせいだ。その自覚があるため、恥ずかしくて氷室くんの顔をまともに見られなくなった。

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