憧れのCEOは一途女子を愛でる
きっと辰巳さんが救急車を呼んで、そのままずっと付き添ってくれているのだ。
気にしなくていいと言われても、そんなわけにはいかない。
社長だって今日は有意義に休日を過ごしていたかもしれないのに、連絡を受けたせいで病院に来させてしまったと思うと申し訳なさが先に立つ。だけどありがたい気持ちももちろんある。
「十三歳のときに父を亡くして以来、うちは家族の中で祖父が唯一の男性だから、私は心のどこかで頼っていたんです」
病院で話しているとき、父のように祖父もいなくなるかもしれないと考えた途端に不安でたまらなくなった。
普段はなにげない日常を送っているだけだけれど、祖父や母の存在は私にとってとても大きい。
「なんの根拠もなく、祖父はいつまでも元気だと思っていました。ずっと私と母のそばにいてくれる、って」
よく考えたら祖父は今年で七十三歳だ。身体のあちこちが痛いだとか、不具合が出ていてもおかしくない年齢なのに、祖父の弱音は一度も聞いたことがない。
私や母に心配をかけないために口にしなかったのだろう。
どんな人もいつかは絶対にその人生を終える。それは生まれたときから決まっていて私もわかっているはずなのに、いずれ見送る日が来ると思うと本当につらい。
『人との縁や絆も大事にしてほしいと俺は思ってる』
ふと、先ほどの祖父の言葉が頭に浮かんできた。あれにはとても深い意味が込められていた気がする。
時間が永遠ではないからこそ、家族だけではなく自分の周りにいる人たちとの縁を大切にして、充実した人生を送れと言いたかったのかもしれない。だから恋愛も怖がるな、と。
「あの……ところでどこに向かってるんですか?」
モヤモヤとしながらあれこれ考えていたら、車がレインボーブリッジを渡っていることに気が付いた。
運転をする彼の横顔をチラリと見ると、やわらかい笑みをたたえている。
「海が見たくなった。海浜公園に行こう」
気にしなくていいと言われても、そんなわけにはいかない。
社長だって今日は有意義に休日を過ごしていたかもしれないのに、連絡を受けたせいで病院に来させてしまったと思うと申し訳なさが先に立つ。だけどありがたい気持ちももちろんある。
「十三歳のときに父を亡くして以来、うちは家族の中で祖父が唯一の男性だから、私は心のどこかで頼っていたんです」
病院で話しているとき、父のように祖父もいなくなるかもしれないと考えた途端に不安でたまらなくなった。
普段はなにげない日常を送っているだけだけれど、祖父や母の存在は私にとってとても大きい。
「なんの根拠もなく、祖父はいつまでも元気だと思っていました。ずっと私と母のそばにいてくれる、って」
よく考えたら祖父は今年で七十三歳だ。身体のあちこちが痛いだとか、不具合が出ていてもおかしくない年齢なのに、祖父の弱音は一度も聞いたことがない。
私や母に心配をかけないために口にしなかったのだろう。
どんな人もいつかは絶対にその人生を終える。それは生まれたときから決まっていて私もわかっているはずなのに、いずれ見送る日が来ると思うと本当につらい。
『人との縁や絆も大事にしてほしいと俺は思ってる』
ふと、先ほどの祖父の言葉が頭に浮かんできた。あれにはとても深い意味が込められていた気がする。
時間が永遠ではないからこそ、家族だけではなく自分の周りにいる人たちとの縁を大切にして、充実した人生を送れと言いたかったのかもしれない。だから恋愛も怖がるな、と。
「あの……ところでどこに向かってるんですか?」
モヤモヤとしながらあれこれ考えていたら、車がレインボーブリッジを渡っていることに気が付いた。
運転をする彼の横顔をチラリと見ると、やわらかい笑みをたたえている。
「海が見たくなった。海浜公園に行こう」