憧れのCEOは一途女子を愛でる
 だいたい、社長は私をどう思っているのだろう?
 会社以外で繋がれてよかったとか、キラキラして見えていると言ってくれてはいるものの、ひとりの女として私を好きだという確信はない。
 キスはされたけれど、あのときは雰囲気に流されただけかもしれないとネガティブな思考に陥りそうになる。

 こんなに完璧な男性なのだから、ほかの女性からたくさんアプローチもあると思うし……。
 そこまで考えたところで、ふと百合菜の存在が頭をかすめた。そういえばあれからどうなったのだろう?

「社長、正直に答えてください。百合菜から連絡は来ていますか?」

 私が真剣な顔でストレートに尋ねてみると、彼は少し考えてから首を小さく縦に振った。
 やはりな、と嫌な予感が当たった私は自然と口をへの字に曲げてうつむいた。

「何度か会社に電話があったみたいだけど、俺は直接話してはいない」

「社長には彼女の色仕掛けの罠にはまってほしくありません。気を付けてくださいね」

「俺のことが心配?」

 社長はフフッと余裕たっぷりに笑っている。私は百合菜が怖くて仕方ないというのに。

「ああいう悪知恵がはたらくタイプには引っかからないよ。俺はもっと一生懸命で真っすぐで、心が清流みたいな人が好きだから」

 綺麗な川のほとりで言われたあの日の言葉がよみがえり、再びドキドキと心臓が早鐘を打ち始める。

『この川の水は君の心と同じで、本当に綺麗だよな』

 あんなふうに褒めれたのは生まれて初めてですごく感動したから、あの言葉だけは絶対に忘れられない。

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