憧れのCEOは一途女子を愛でる
スピンオフ ~昼想夜夢~
【スピンオフ~昼想夜夢~】
「今日、中丸商事に行ったんだけど、福井常務がずっと朔也の話ばかりしてたぞ」
社長室でミーティングを終えた途端、朝陽がニヤニヤとしながらそんな話題を振ってきた。
中丸商事は創立当初から取引のある会社で、福井常務には常日頃からお世話になっている。年齢は俺たちの父親と同じくらいで、やり手だと有名な人だ。
「俺の話って?」
「相変わらず休みの日には海に行ってるのか?とか、恋人はいないんだよな?って。まぁ、なんとなく聞かれるだろうなと予想はしてたけど」
俺は溜め息を吐きつつ、片手で顔を覆った。福井常務は信頼できる人だし、朝陽との会話に悪気がないのもわかっている。
けれど先日、会食の場にいきなり自分の娘を連れてきたのにはさすがに驚いた。どうやら俺とくっつけてしまおうという魂胆らしい。
「朝陽にまで探りを入れるとは……」
「本気で朔也を婿にしたいと考えていそうだな」
他人事だと思って冗談ぽく笑う朝陽を尻目に、俺はガクリと肩を落とす。
会食に現れた福井常務の娘は二十代半ばくらいの年齢で顔も美人の部類だったけれど、俺にその気はない。
なのにこのままでは常務に押し切られそうで怖いという気持ちもある。
いきなりテーブルの上に婚姻届を広げてサインしろと言われたら……という想像が膨らんで頭が痛いが、常務の機嫌を損ないたくないのも事実だ。
「朝陽じゃなくてなんで俺なんだよ」
俺より朝陽のほうがイケメンだし社長なのだから、普通は朝陽に狙いを定めるはずなのに。
「福井常務は朔也の人柄に惚れたんだろう。お前は人の懐にスッと入る性格だから」
「あー、俺は中高年にはモテるかもな」
両手を広げながら冗談めかして言うと朝陽はアハハと声に出して爆笑したけれど、俺にとっては笑いごとではない。
「なんとかあきらめてもらう方法はないかなぁ?」
ボソリとつぶやくと、朝陽は腕組みをしたまま俺のほうをじっと見た。
「今日、中丸商事に行ったんだけど、福井常務がずっと朔也の話ばかりしてたぞ」
社長室でミーティングを終えた途端、朝陽がニヤニヤとしながらそんな話題を振ってきた。
中丸商事は創立当初から取引のある会社で、福井常務には常日頃からお世話になっている。年齢は俺たちの父親と同じくらいで、やり手だと有名な人だ。
「俺の話って?」
「相変わらず休みの日には海に行ってるのか?とか、恋人はいないんだよな?って。まぁ、なんとなく聞かれるだろうなと予想はしてたけど」
俺は溜め息を吐きつつ、片手で顔を覆った。福井常務は信頼できる人だし、朝陽との会話に悪気がないのもわかっている。
けれど先日、会食の場にいきなり自分の娘を連れてきたのにはさすがに驚いた。どうやら俺とくっつけてしまおうという魂胆らしい。
「朝陽にまで探りを入れるとは……」
「本気で朔也を婿にしたいと考えていそうだな」
他人事だと思って冗談ぽく笑う朝陽を尻目に、俺はガクリと肩を落とす。
会食に現れた福井常務の娘は二十代半ばくらいの年齢で顔も美人の部類だったけれど、俺にその気はない。
なのにこのままでは常務に押し切られそうで怖いという気持ちもある。
いきなりテーブルの上に婚姻届を広げてサインしろと言われたら……という想像が膨らんで頭が痛いが、常務の機嫌を損ないたくないのも事実だ。
「朝陽じゃなくてなんで俺なんだよ」
俺より朝陽のほうがイケメンだし社長なのだから、普通は朝陽に狙いを定めるはずなのに。
「福井常務は朔也の人柄に惚れたんだろう。お前は人の懐にスッと入る性格だから」
「あー、俺は中高年にはモテるかもな」
両手を広げながら冗談めかして言うと朝陽はアハハと声に出して爆笑したけれど、俺にとっては笑いごとではない。
「なんとかあきらめてもらう方法はないかなぁ?」
ボソリとつぶやくと、朝陽は腕組みをしたまま俺のほうをじっと見た。