憧れのCEOは一途女子を愛でる
「方法はひとつしかないだろう」

 自信満々にそう言ってのける朝陽に、俺は懐疑的に片眉を上げる。

「違う女性と結婚してしまえばいい」

「お前はなにを……」

「それなら福井常務もあきらめるしかないじゃないか」

 朝陽がその選択肢しかないのだと俺を追い詰めていく。
 “違う女性”とだけ言って、わざと固有名詞を口にしないあたりが朝陽らしい。

「俺が結婚したいと思う相手はこの世にひとりしかいない。それはこれからも変わらない」

「知ってる」

「彼女が俺を選ばないなら、俺は誰とも結婚しない」

 変わり者だと思われようが頑固だと言われようが、どうでもいい。
 ほかの女は愛せないと、俺は自分でもうわかっているから。

「朔也は一途だよな。いつから好きなんだっけ?」

「わからん。あきらめようと思った時期もあったけど、結局俺の心の中にはあの人がずっといるんだよ」

 俺がそう答えた途端、朝陽は苦笑いをしながらむずかしい顔をした。

「このままでいいって言うけど、もしも伊地知さんがほかの男と急に結婚したらどうするんだ?」

「うーん……正直それはキツい。でも俺は好きなままなんだろうな」

 たとえ彼女がほかの男と電撃結婚をしたとしても、裏切られたとは思わない。
 俺は彼女への気持ちをどうしたって消せないし、今までと同じく見守っていくのだろう。

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